身内にいたら心強いのは、シュワちゃんかプレデターか ──映画『プレデター』がもたらす楽しい妄想

作品考察

おぼろげな記憶を手繰り寄せて思い出してみると、はじめて僕が映画『プレデター』を観たのは、小学生高学年くらいの頃だったはずだ。父がアーノルド・シュワルツネッガー出演作が好きだったのか、地上波で放送されたものを当時VHSで録画して、休日の暇な時間に僕たち兄弟も一緒に鑑賞していた。そんな中の一本が『プレデター』だ。

筋肉ムキムキのシュワちゃん(あえてリスペクトを込めてそう呼ばせてもらう)と、さらにぶっちぎりでムキムキの宇宙から来たプレデターの姿が、少年だった僕の心に強く焼き付いてしまったようだ。

中高とおとなしくひ弱だった僕は、元気のいい同年代の生徒によく絡まれることがあった。そんなとき、僕の頭の中には決まってワンシーンが立ち上がってきた。

もしこの場に、あのジャングルを生き延びたシュワちゃんがいたら。あるいは、姿を消して静かにこちらを見下ろすプレデターが“味方”として潜んでいたら――。

もちろん現実はそんなに都合よくはいかない。筋肉もなければ、特殊部隊の経験も、光学迷彩も持ち合わせていない。それでも少年だった僕は、心の中で何度も彼らを“召喚”していた。

「身内にいたら、どっちが心強いだろう?」

なぜ今、『プレデター』なのか

『プレデター』の公開は1987年。気づけば、もう38年も前の映画になる。それでもこの作品は、懐かしさだけで語られる“思い出の一本”には収まっていない。むしろ不思議なことに、時代を越えて何度も語り直され、作り直され、愛され続けている。

子どもの頃、VHSで観たジャングルの熱気。筋肉が誇張され、銃声が響き、そして「見えない何か」に一人ずつ狩られていく恐怖。大人になった今あらためて思う。この映画は、シンプルなのに奥行きが深い。だからこそ、何度でも妄想の余地が残されているのだ。

シュワちゃん=「分かりやすい強さ」の象徴

この映画を語るうえで欠かせないのが、若き日のシュワちゃんだ。ムキムキで、頼れて、指示が的確で、「この人がいれば大丈夫だろう」と思わせる安心感。

彼が体現しているのは、人間が憧れる“分かりやすい強さ”だと思う。

  • 鍛え上げられた肉体
  • 仲間を率いるリーダーシップ
  • 恐怖の中でも折れない精神力

身内にいたら、間違いなく心強い。相談したら背中を叩いてくれそうだし、何かあれば前に出てくれそうだ。少年だった僕が、心の中で何度も彼を呼び出した理由も、きっとそこにあった。

プレデター=「理解不能な強さ」という恐怖

一方でプレデターはどうだろう。姿は見えず、言葉も通じず、何を考えているのか分からない。だが、圧倒的に強い。

ただし興味深いのは、プレデターが無差別な怪物ではないという点だ。彼(あるいはそれ)には、独自のルールと美学がある。

  • 丸腰の者は狩らない
  • 弱者には手を出さない
  • 強い相手を“獲物”として選ぶ

敵なのに、どこかフェア。恐ろしいのに、どこか誇り高い。このアンバランスさが、プレデターを単なるモンスターで終わらせていない。

「身内にいたらどっちが心強い?」という妄想

ここで、あらためて問いを立ててみる。

身内にいたら心強いのは、シュワちゃんか、プレデターか。

シュワちゃんは、頼れる。でも人間だから、限界もある。プレデターは、強すぎる。でも味方かどうか、最後まで分からない。

子どもの頃の僕は、この妄想を何度も頭の中で転がしていた。絡まれたとき。怖かったとき。どうしていいか分からなかったとき。現実には誰も来ない。でも、妄想の中ではいつも「助け」があった。

今思えば、それは映画がくれた“心の避難所”だったのかもしれない。

それでも続編が生まれ続ける理由

ここが、あらためて凄いと思うところだ。『プレデター』は、その後も何度も続編やスピンオフが作られている。評価の波はあれど、近年も再び多くの人の心を掴んだ作品が出てきたのは記憶に新しい。

舞台を変え、時代を変え、それでも成立してしまう。なぜか。

それは『プレデター』が、設定ではなく“構造”が強い映画だからだと思う。

  • 未知の存在
  • 人間の恐怖
  • 強さとは何かという問い

この芯がブレない限り、時代が変わっても物語は生き続ける。これはもう、名作の条件そのものだ。

結論は出さない、という結論

結局のところ、「身内にいたらどっちが心強いか」という問いに、明確な答えは出ない。でも、それでいい。

シュワちゃんの強さも、プレデターの強さも、どちらも“違う形の希望”だからだ。少年だった僕が、この映画を名作として心に残し続けている理由も、きっとそこにある。

強さは一つじゃない。怖さの向こうにも、美学がある。そして今日もまた、誰かが『プレデター』を観て、同じように妄想を膨らませているのだろう。

もし、この最初の『プレデター』をこれから初めて観るという方がいたら。
若き日のシュワちゃんの勇姿と、恐ろしいはずのプレデターが怪我の治療中に、痛すぎて思わず雄叫びを上げてしまう、あのおちゃめなシーンもぜひ楽しんでほしい。

観終わったあとの余韻の中で、たっぷりと妄想してみてください。
きっと続編も気になってくるし、日常のちょっとしたネガティブな瞬間さえ、少しだけ楽しめるようになるかもしれません。


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